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 遊星は今でも夢に見る。
 WRGP予選をいよいよ数日後に控えた深夜、プログラムが完成したその日のことを。完成データを前にブルーノと肩を組み合ったこと、互いの功績を称え合ったこと、これまでの気苦労が報われた喜びを。待ち侘びた、魔法使いの”魔法”がいよいよ明かされるのだと。それとなく、スクロールする手が速ったこと。


 謎の空白行を埋めた魔法──。

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1236 *                 TTTTT    EEE      A      M...M
1237 *                   T      E-      A A     M M M
1238 *                   T      EEE    A " A    M   M
1239 *
1240 *           555555555555555555555555555555555555555555555555    ::"""""""""""""""""::
1241 *          5555555           ........             55555555     ::               ::
1242 *         5555555            DDDDDDDDDDD.        555555       ::              ::
1243 *        55555555555555555  DDDDDDDDDDDDD:      555          ::       ::::::::::
1244 *       55555555555555555  DDDDDDDDDDDDDDD:                ::       _:::::::::
1245 *       5555555555555555  DDDDD    DDDDDDD:  sssssssss   ..             :::
1246 *            5555555555  DDDDD    DDDDDDD  sssss        ..      ::::::::::
1247 *           5555555555  DDDDDD .DDDDDDDD  sssssssssss  ..          :::::
1248 *   5555555555555555  DDDDDDDDDDDDDDD         sssss ..           ::::
1249 *  5555555555555555  DDDDDDDDDDDDD.    sssssssssss .............::::
 それは、遊星も思わず吹き出してしまう”愉快な魔法”だった。意味のない文字列が大量に画面を埋め、ひとつの絵を描く──アスキーアートで書かれた「TEAM 5D’s」のロゴだった。

 このチーム名は数日間に渡る協議の上、ジャックの提案が決定打になったものだ。赤き龍に導かれた龍の痣をもつもの、遊星たちシグナー五人を体現している。何の「D」か、「5」だけではなく龍亜やブルーノらを含めた意味や数字では駄目か──等、ブルーノもメンバーに混じって、決闘さながら言葉の応酬と協議を重ねた末に生まれたチーム名だった。
 そのロゴを、ブルーノ自身が開発の側でこしらえた手打ちか、もしくはロゴ画像を取り込み、アスキーアートに自動生成するツールを使ったのだろう。魔法さながら、モニタ上の白黒のドットの世界によく再現されていた。

1251* みんなで優勝しよう!
 ──と、ロゴの下部には、ブルーノのコメントが一行書き加えられている。

「あはは、本当は完全サプライズで仕込むつもりだったんだけど……。自分で”魔法”なんて言ってハードル上げちゃったから、緊張しちゃうね。……どうかな?」
 デスクトップの隣に並んだブルーノが気恥ずかしそうに頬をかいていた。あの時、遊星に”大量の行間”を知られるつもりはなかったらしい。この大胆なアスキーアートの仕込みといい、なかなかの胆力である。

 遊星は微笑んでブルーノに答える。
 だが、一行足りないな──と、遊星はエンターキーを押してさらに書き加え始めた。芸術作品は、評論家や学芸員といった人々が作者と作品の解説を書き添えるという。自分が作ったものでもないのに、他人の作品を。いつ、どこで、誰が、なぜ、何を、どのように──。遊星に芸術の良し悪しや作法はわからない。だが、その時だけは、彼らの役割と使命感がわかる気がした。眼前に広がる感動を、驚きを、魔法を、作者に代行して記録しなければならない。


1252* Auther:“D” ─大好きブルーノちゃんより─


 遊星の瞳の奥に、今でもブルーノの表情が思い浮かぶ。この署名を代筆した時の、ブルーノの弾けんばかりの笑顔と、自分の名を呼んだ驚きと喜びの声を。静かな青紫色の瞳をたたえたブルーノの瞳が、その時ばかりは星のように輝いて見えた光景を。



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1236 *                  TTTTT    EEE      A      M...M
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1238 *                    T      EEE    A " A    M   M
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1251 * みんなで優勝しよう!
1252 * Auther:“D” ─大好きブルーノちゃんより─
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